限界研blog

限界研の活動や記事を掲載します。

全開レビューEX

「「距離」と「親密さ」 ―濱口竜介監督旧作上映に寄せて―」

「距離」と「親密さ」 ―濱口竜介監督旧作上映に寄せて― 冨塚亮平 本稿では、『ビジュアル・コミュニケーション』に寄稿させていただいた拙論「世界は情報ではない 濱口竜介試論」の内容と、濱口作品の上映情報について簡単に紹介します。 1第六十八回ロカル…

「防犯/監視カメラの映画史ーー風景から環境へ」

「防犯/監視カメラの映画史ーー風景から環境へ」海老原豊『ビジュアル・コミュニケーション』に収録した「防犯/監視カメラの映画史ーー風景から環境へ」は、どのようなものか?この論考は、防犯/監視カメラが出てくる映画をたどる通史。1 そもそもそのカ…

『ビジュアル・コミュニケーション』と「インディー・ゲームの美学」について

『ビジュアル・コミュニケーション』と「インディー・ゲームの美学」について 藤田直哉限界研で、『ビジュアル・コミュニケーション 動画時代の文化批評』という共著を刊行しました。ビジュアル・コミュニケーション――動画時代の文化批評作者: 限界研,飯田一…

「ポストメディウム」の映画/映像論

本稿では、私が実質的な責任編集を務めた『ビジュアル・コミュニケーション』の趣旨を踏まえて、今日の映画を含む文化状況とそこでの批評の機能、そして拙論の内容について、簡単に紹介します。ビジュアル・コミュニケーション――動画時代の文化批評作者: 限…

揺動メディア、入門書、ルック批評

はじめまして、佐々木友輔と申します。映像作家・企画者を名乗り、各所で映画上映や展覧会運営、執筆活動をおこなっています(11月21、22日には新宿で新作上映がありますので、ご興味を持たれた方はぜひご覧下さい。このたびは、編者の渡邉大輔さんのお誘い…

藤田直哉の批評的転向…? 笠井潔×藤田直哉『文化亡国論』の右傾エンタメ論

藤田直哉の批評的転向…? 笠井潔×藤田直哉『文化亡国論』の右傾エンタメ論笠井潔×藤田直哉『文化亡国論』(響文社)文化亡国論作者: 笠井潔,藤田直哉,仮面女子出版社/メーカー: 響文社発売日: 2015/04/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブロ…

笠井潔×藤田直哉『文化亡国論』評――ホールデン少年と殺し合う系の僕ら

笠井潔×藤田直哉『文化亡国論』評――ホールデン少年と殺し合う系の僕ら 旭秋隆文化亡国論作者: 笠井潔,藤田直哉,仮面女子出版社/メーカー: 響文社発売日: 2015/04/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (10件) を見る笠井潔・藤田直哉『文…

【日本SFサイシン部09】実に久しぶりであるシーナさんのガッツリSF――椎名誠『埠頭三角暗黒市場』(講談社)

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。 今回は2014年6月発売の椎名誠『埠頭三角暗黒市場』(講談社)。「小説現代」に2010年から2012年にかけて連載されたものがもとになっている。椎名誠は『アド・バード』で1990…

演劇論「その後の柴幸男」ーー『わが星』から『わたしの星』へ

1 「リピートからリスタート」だったのか?本稿は「その後の柴幸男」として、『わたしの星』(2014年、三鷹芸術劇場)を論じたい。「その後」とは「どの後」かといえば、『テトラポッド』(2012年、あうるすぽっと)以降だ。私は、限界blogで書いたレビュー…

【日本SFサイシン部08】超時間×超種族=二次創作的コミュニケーション――小川一水『コロロギ岳から木星トロヤへ』(ハヤカワ文庫JA)

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。 今回も「せいぜい半年以内」の縛りを逸脱。先月、筑波で行われた日本SF大会「なつこん」で発表された第45回星雲賞で2014年日本長篇部門に輝いた小川一水『コロロギ岳から…

【日本SFサイシン部07】ポストセカイ系ハードSFの誕生――六冬和生『みずは無間』(ハヤカワJコレクション) 

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。 「せいぜい半年」という縛りだったが、第7回は発売後8ヶ月の作品。今週末にひかえている日本SF大会「なつこん」に著者本人が参加し、海老原も司会で企画に関るため、急遽…

【日本SFサイシン部06】2004年のゲーム的リアリズム――桜坂洋『All You Need Is Kill』(集英社スーパーダッシュ文庫) 

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。 「せいぜい半年」という縛りだったが、第6回は例外! トム・クルーズ主演、ダグ・ライマン監督のハリウッドSF映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』が7月4日より全国…

【日本SFサイシン部05】タイムパラドックスSFの極限、本についての本についての本――法条遥『リアクト』(ハヤカワ文庫JA) 

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。隔週で月2回更新を目指す! 第5回は法条遥『リアクト』。リアクト (ハヤカワ文庫JA)作者: 法条遥出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/04/24メディア: 文庫この商品を含む…

【日本SFサイシン部04】言語を失ったあとのコミュニケーション――福田和代『バベル』(文藝春秋)【評者:海老原豊】 

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。隔週で月2回更新を目指す! 第4回は福田和代『バベル』、パンデミック/言語/SF。本作は、言語SFの伝統に連なる作品であり、なおかつ最先端に位置している。本作が切り…

【日本SFサイシン部03】ぎりぎりでディストピアに落ちないために――長谷敏司『My Humanity』(ハヤカワ文庫JA) 

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。隔週で月2回更新を目指す! 第3回は長谷敏司『My Humanity』、著者初の短篇集。 My Humanity (ハヤカワ文庫JA)作者: 長谷敏司出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/02/21メ…

【日本SFサイシン部02】不確かな風景――下永聖高『オニキス』(ハヤカワJコレクション)【評者:海老原豊】 

最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る! 書評コーナー。隔週で月2回更新を目指す! 2回目は、下永聖高『オニキス』。第一回ハヤカワSFコンテストで最終選考に残り、『SFマガジン』2014年1月号に掲載された表題作「オニキス」を…

伊藤計劃を読むためのn冊 その8 J・G・バラード『結晶世界』

『Genkai vol.3 伊藤計劃以後』の特集記事「伊藤計劃を読むためのn冊」の原稿を再掲します。 ★J・G・バラード『結晶世界』結晶世界 (創元SF文庫)作者: J・G・バラード,中村保男出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1969/01/10メディア: 文庫購入: 11人 クリ…

【日本SFサイシン部01】これもまたポストヒューマン――菅浩江『誰に見しょとて』【評者:海老原豊】

日本SFサイシン部とは? 最新の日本SF(出版されて、せいぜい半年以内)の最深部に迫る書評コーナー。隔週で月2回更新を目指す! 記念すべき初回は菅浩江『誰に見しょとて』。誰に見しょとて (Jコレクション)作者: 菅浩江出版社/メーカー: 早川書房発売日:…

伊藤計劃を読むためのn冊 その8 ニール・ブロムカンプ監督『エリジウム』

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★ニール・ブロムカンプ監督『エリジウム』エリジウム [Blu-ray]出…

伊藤計劃を読むためのn冊 その6 ベンジャミン・リベット『マインド・タイム 脳と意識の時間』

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★ ベンジャミン・リベット『マインド・タイム 脳と意識の時間』マ…

伊藤計劃を読むためのn冊 その5 コリイ・ドクトロウ『リトル・ブラザー』

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★コリイ・ドクトロウ『リトル・ブラザー』リトル・ブラザー作者: …

伊藤計劃を読むためのn冊 その4 栗本薫『レダ』

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★栗本薫『レダ』レダ1 (ハヤカワ文庫JA)作者: 栗本薫,野川いづみ出…

伊藤計劃を読むためのn冊 その3 八杉将司『光を忘れた星で』

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★ 八杉将司『光を忘れた星で』講談社BOX光を忘れた星で (講談社…

伊藤計劃を読むためのn冊 その2 神林長平「いま集合的無意識を、」

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★神林長平「いま集合的無意識を、」(『いま集合的無意識を、』ハ…

伊藤計劃を読むためのn冊 その1 イーライ・パリサー『閉じこもるインターネット』(早川書房)

トークイベント「なぜ大学生はSFに惹かれるのか? 〜限界研×山田正紀×大学読書人大賞元推薦者〜」支援企画として、「伊藤計劃を読むためのn冊」(『Genkai vol.3』収録)再掲していきます。 ★イーライ・パリサー『閉じこもるインターネット』(早川書房)閉…

伊藤計劃以後としての野粼まど『know』――「知る」ことを巡る政治性の表現――【評者:旭秋隆】

このレビューは、11月4日の文学フリマで販売される『Genkai vol.3』の「伊藤計画を読むためのn冊」番外編である。本レビューで言及されているトークイベントの様子も『Genkai』に収録されている。 青山ブックセンターで行われたトークイベント『二十代評論家…

SFと怪獣の深い関係?――山本弘『MM9』【評者:中里昌平】

SFと怪獣の深い関係?――山本弘『MM9』 絶滅の危機? いきなりで恐縮だが、みなさんはさきごろ公開された映画『パシフィック・リム』はご覧になっただろうか? 『パンズ・ラビリンス』や『ヘルボーイ』シリーズなどで知られる映画監督ギレルモ・デル・トロが…

『功殻機動隊ARISE』【評者:旭秋隆】

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』 評者:旭秋隆 『攻殻機動隊ARISE』は、その時代設定が『攻殻機動隊』シリーズの最初期にあたる。シリーズの中心となる公安九課はまだ存在せず、本作の主人公である草薙素子も少佐と呼ばれていない。そのため、電脳…

映像圏の射程――渡邉大輔『イメージの進行形』から東京デスロック『東京ノート』へ【評者:海老原豊】

●映像圏の射程 渡邉大輔が『イメージの進行形』で提示した概念・映像圏は、情報環境の変化によってイメージが社会に氾濫した状態をさす。主たる分析は映画である。それまで比喩的にも字義的にも固定されていた観客、監督(作者)という役割、それらを直線的…

その後のサブカルチャー戦争――三崎亜記『逆回りのお散歩』【評者:海老原豊】

限界研3冊目の評論集『サブカルチャー戦争』(南雲堂)は、サブカルチャー表象にみられる「あたらしい戦争のかたち」を描きだす試みだった。はっきりといつが基準であると断言できない、または論者によって切断面がばらばらであったりするが、私たちの生きる…