作家になりたい。なかでもミステリ作家になりたい。
そう思うミステリファンは、今も少なくないと思います。
なにを隠そう、僕もそうしたミステリファンのひとりでした。
今では、ミステリの評論をちらほら書くという立場になっておりますが、心のどこかでその夢がちらっと頭をもたげることがないとはいえません。
先日とある評論書のあとがきに、作家志望に向けた言葉を書いたこともありますが、あの言葉の裏にはかつて若かった自分の反省からのものもあったように思います*1。
ひとつの作品をかたちにするということは本当に難しい。
先日発売された土屋隆夫『推理小説作法 増補新版』は、小説誌「EQ」に1991年から1992年まで連載された創作論を柱としてまとめられた本です。そのため、2024年のいまとは状況や認識が異なるところがあるのは否めません。
しかし、作者としての生みの苦しみが全編にわたって刷り込まれており、作家志望の心を鼓舞し、支えになってくれる本は『推理小説作法』以外に思いつきません。