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限界研読書会――藤田直哉『ゲームが教える世界の論点』

文責:藤井義允
限界研では、毎月一度、批評家たちが集い読書会が行われている。

今回は限界研のメンバーでもある藤田直哉の書いた新書『ゲームが教える世界の論点』(集英社新書)を著者本人も交えて行った。
本書はもともとビデオゲームなどを中心にした情報サイトである「IGN JAPAN」に藤田が「SF史に残る(べき)ゲームたち」という連載をもとに再構成されたものである。
jp.ign.com


藤田はこの連載を始めたきっかけとして、現SF界隈の人間はゲームをやらずゲームへの評価がきちんと出来ていないという問題意識から、連載を始めたということだった。*1

その中でも新書になるということで、読者層を新書を読むサラリーマン層に見据えて、連載を大幅に組み直し、いわば一般の人間でも現在のゲームの批評性が分かるように組み直したのだった。そのため、コアなゲームファンには物足りないかもしれないが、その人たちは上記サイトから連載を参照してみるといいだろう。


内容としては、大衆的なゲームは一般的に娯楽であり、それ以上ではないという認識も多いかもしれないが、実はそこには豊饒な社会的な問題などを扱った作品群が多くそれを最近話題のゲームを取り上げ、論じているものになっている。

メインで扱っているゲームは以下になる。

デウスエクス マンカインド・ディバイデッド』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』、『ペルソナ5』、『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』、『DEATH STRANDING』、『Detroit: Become Human』、『The Stanley Parable』、『ライフ イズ ストレンジ』、『The Last of Us Part II』、『イースVIII Lacrimosa of DANA』、『レッド・デッド・リデンプションII』、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』、『ファイナルファンタジーVII』、『ファイナルファンタジーVII リメイク』、『ゴッド・オブ・ウォー』、『Horizon Zero Dawn』

おそらく、ゲームを好む人間にとってはよく聞くタイトルであるが、ゲームを知らないものにとっては大半が知らないものになっているかもしれない。著者も実際に行ったことのあるものもあったが、知らないゲームもいくつかあった。

読書会で出た議論としては現代のオルタナ右翼の扱い(定義の曖昧さについて)、またレトロトピアの未来性について(本書はレトロトピア=歴史修正主義的なものに繋げているが、マイナスの側面だけなのか)、教育との関連(「Minecraft」の教材的使用)、また新書には組み込もうと思って組み込めなかったジェンダーの問題についてなど、多岐に渡る内容が出ていった。また今後の課題としてゲームの即応性=操作、反応、依存などを視野に入れた何かを考えるべきではないかという部分も藤田本人の話から出ていった。

すでにゲームとは単純な娯楽としてではなく、政治や社会性を考えざるをえない内容となっている。近年は様々なフィクションにおいて、ポリティカルコレクトネスなども意識した造りを要請されているのが素人目でも見ることができるだろう。だとするならば、ゲームという媒体にそのような社会性を読み取らないこと自体がおかしいこととも言えるだろう。

本書はそのようなことを考える一助になるものとなっている。*2

*1:※1 厳密にはしていた人もいたが少なく、また伊藤計劃東浩紀などの評論を行っていた人達も美少女ゲームばかりで偏りがあるということがあった。

*2:※2以下は著者の藤田が『ゲームが教える世界の論点』について述べた動画・記事である。是非参照してほしい。

藤田直哉吉田寛・五百蔵容】『ゲームが教える世界の論点』 現実社会・政治にも影響するゲームの今とこれからを考える www.youtube.com
「現代のゲーム」、じつはめちゃくちゃ「レベルが高かった」…!大人こそ触れてほしい「4つのゲーム」 gendai.media