限界研、最新刊『ポストヒューマニティーズ』のよみどころ紹介シリーズ。全10回の1回目は冒頭を飾る岡和田晃論文。
タイトル、「「伊藤計劃以後」と「継承」の問題――宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』を中心に」。
『虐殺器官』『ハーモニー』という傑作を残しながらも夭折した伊藤計劃。彼の没後、『SFマガジン』では「伊藤計劃以後」という特集が組まれた。
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でも、この「伊藤計劃以後」っていうターム、わかるようでわからない。単なる時代区分なのか? それとも、思想的な断絶なのか? ともすれば一人歩きし、バズワードになってしまうことの「伊藤計劃以後」を、岡和田晃は、たんねんに輪郭をなぞっていく。
岡和田の手つきが光るのは、伊藤計劃や、「伊藤計劃以後」の作家と、それ以前との作家・作品との比較をするところだ。
たとえば伊藤計劃を意識して書かれた神林長平『いま集合的無意識を、』。ベテランSF作家と、「伊藤計劃」との対話を描いたことで話題になった表題作。はたしてこの作品は「伊藤計劃以後」なのだろうか?
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岡和田は、違うという。
伊藤計劃にあって神林長平にないものとして、岡和田が指摘しているのは、次の3つ。世代の継承、物語の暴力性、そしてネット(アーキテクチャ)への批判的意識だ。詳細な検討は、ぜひ本論文にあたってもらいたい。
また、岡和田が「伊藤計劃以後」の作家のひとりとして中心的に論じているのが、宮内悠介。とりあげる作品は出たばかりの『ヨハネスブルグの天使たち』。これが単なる「ボーカロイド小説」でないことが、宮内を「伊藤計劃以後」に含める理由だ。
ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
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ここで岡和田が宮内悠介と比べるのは、野尻抱介『南極点のピアピア動画』。楽天的に萌えとボーカロイドの可能性をうたい上げた『ピアピア』を取り上げることで、「伊藤計劃以後」の輪郭を、さらに明確にしている。
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伊藤計劃のSFを読んだことがある人はおおいと思う。ただ、伊藤計劃だけではもう終わらない。着実に「伊藤計劃以後」の世界は広まっている。この事態をまざまざと見せつけてくれるのが、岡和田論文だ。
なおBookNews連動企画「SF・評論入門」の3回目は岡和田晃。こちらも、ぜひご覧ください。
3回目「SF・評論入門3:「伊藤計劃以後」とハイ・ファンタジーの危機――未来は『十三番目の王子』の先にある!岡和田晃」