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『前衛のゾンビたち 地域アートの諸問題』制作日誌

限界研の藤田直哉が編著『前衛のゾンビたち 地域アートの諸問題』(堀之内出版)の制作日誌をウェブで公開しています。

これは同タイトルの『すばる』2014年10月号掲載論文が喚起した議論を概括するものです。

藤田直哉はじめ、美術作家、批評家、社会学者、美学研究者など様々な識者の論考や対談が収録されます。

刊行にあたって 

 現在、日本のあちこちで「地域アート」が盛んです。
 現代アートの最先端は、「地域アート」にあると断言することも可能です。
 この本は、そこで作られている作品や起こっている現象について、真剣に考察することを目指した本です。第一線で活躍するアーティストや、学者、批評家の方々に参加していただき、現在の日本で隆盛している「地域アート」について、真剣に考察し、討議し、提案しようとするものです。
 芸術はどう変わるのか、美はどう変わるのか、人々の鑑賞の在り方はどう変わっているのか。それを探ることは、芸術のみの話ではなく、わたしたちが生きていることそのものを問うことになります。
 現在起こっている芸術の問題は、政治的・社会的・経済的なものと深く結びついています。
 特に、東日本大震災以降は、「政治の季節」的機運も高まっており、社会を意識するアーティストの活動と「地域アート」が混ざり合っていく傾向も見られました。
 わたしの考えでは、中央と地方の関係、アーティストの生活と公共製作、コミュニティ・デザイン、第三次産業の発展やインターネットなどとの関係、体験型価値の創出、参加型文化の隆盛などと「地域アート」は同時代として共有しているところがある。美術業界のみならず、もっと普遍性のある「変動」が起こっているように思います。
 本書は、「地域アート」を論じながら、同時代に起きている大きな構造の変化を捉えようとし、言語化を試みるものです。それと同時に、作家が時代の中で悪戦苦闘し、世界そのものと格闘して生み出された作品それ自体にある、時代を超えた価値それ自体を言語化し、ひとつの歴史として定着させることを願っています。
 わたしたちがどんな時代に生きて、これからどんな時代を生きようとしているのか。大袈裟に言えば、その答えの一端は、芸術の中に生れ落ちてきます。
 本書を手に取ることで新しい認識と世界の可能性が拓かれれば、幸いです。
 藤田直哉
堀之内出版ウェブサイトより)

参考リンク:Togetterのまとめ「藤田直哉「前衛のゾンビたち――地域アートの諸問題」を巡って 」