いよいよ発売。限界研、最新評論集、『ポストヒューマニティーズ』。
7回目は同人サークル「筑波批評社」で活動をしているシノハラユウキ(はてなlogical cypher scape)の論文、「人間社会から亜人へと捧ぐ言葉は何か――瀬名秀明「希望」論」をご紹介。
この論文のタイトルにもなっている、亜人(demi-human)はよく神話やファンタジーで出てくるような、人間と似て非なるものを指し示す。
だが、今回のシノハラ論文では、ロボットやAI、アンドロイドといった、我々の身近なものにもなっているものを、亜人として論が出発している。
シノハラ論文で述べる、亜人とは現代SFでもよくモチーフにされる。例えば、飛浩隆<廃園の天使>シリーズ、また、長谷敏司『BEATLESS』といったものもこの亜人を扱っている。
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そして、このように私たち人間と一線を画すような言葉をロボットやAIに使うところに本論文のミソがある。つまり、私たちとロボットは似ているけどやはり根本的には違うものだということだ。
「『希望』論」の序盤では、現実では亜人を人間として扱うことは難しいが、フィクションの世界では亜人を人間として扱うこと(=擬人化)がよく行われているという。
シノハラは飛浩隆「ラギッド・ガール」や瀬名秀明<ケンイチくん>シリーズ、また他にも伊藤剛の「マンガのおばけ」を参考にし、フィクションでの亜人の人間化、擬人化が容易になされていることを証左していく。
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しかし、シノハラが述べるように、亜人は根本的には人間ではない。
私たち人間一人一人がまったく同じ思考をすることがあり得ないように、亜人も私たち人間と同じ思考をするとは限らない。
だから、亜人を擬人化して扱うのは果たしていいのだろうか。
それは、人間中心的に考えていることなのではないだろうか。
シノハラ論文では、主に瀬名秀明『希望』を参照し、単純な亜人=人間という思考ではなく、亜人を亜人という個別的なものとして認識し、論を進めている。
そして、その上で、彼ら亜人と人間はどのように接していけば良いのか。「亜人」と「人間」の関係性を考えていく。
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ところで、瀬名秀明の最近の作品は作風を変化させているが、この『希望』は非常に難解な作品になっている。
そんな中、本論文ではこのような作風に瀬名秀明が挑んだ理由を明らかにしていく。これも一つの見所だ。
シノハラが論じていく、『希望』をもとにした「亜人」と「人間」との関係性の模索。
それは、瀬名秀明の問題系の解読と同時に、私たちがいずれ迎えるであろう近い未来、人間とロボットが「共存」していく時代の進言になっている。
では、その進言は一体どのようなものなのか。詳しくは『ポストヒューマニティーズ』で明らかになる。
BookNews連動企画「SF・評論入門」もあわせてご覧ください。4回目は今回紹介したシノハラユウキの論考で、ロボット倫理学について紹介しています。
4回目「SF・評論入門4 あなたはロボに配慮しますか? 〜ロボット倫理学と瀬名秀明〜 シノハラユウキ」
3回目「SF・評論入門3:「伊藤計劃以後」とハイ・ファンタジーの危機――未来は『十三番目の王子』の先にある!岡和田晃」