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限界研4冊目の評論集『21世紀探偵小説』が刊行されます!

 告知です。

 明日、7月31日に限界研の4冊目の評論集『21世紀探偵小説』が発売となります。

21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊

21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊

 2008年に刊行された『探偵小説のクリティカル・ターン』から、毎年一冊評論集を刊行していることとなります。毎回、取り扱うテーマは変われども、それぞれ批評という枠組みを通じて、一石を投じる内容になっています。

 今回の評論集は副題を「ポスト新本格と論理の崩壊」とあります。主にゼロ年代のミステリの状況を論じつつ、かつての本格の論理では論じにくくなったさまざまな事柄について果敢に取り組みました。研究会内部で約1年、主にミステリ関連の書籍を対象に読書会を続け、討議に討議を重ねて書き上げた、その結果がこの一冊となります。

 なかには大胆な断定や厳しい提言などがあるかと思われます。研究会の会員も一枚板ではなく、そうした記述のいくつかに対して、しばしば鋭く意見が対立したこともありました。ただ、それは個々の考え方によるものというよりも、ひとつの共通理解となりうる論理の基盤に大きな亀裂が入り、その亀裂をむしろ広げるかたちで、個々の書き手が新しい何かを掴もうとした結果なのです。

 その意味での「論理の崩壊」です。論理を崩壊させるほど徹底化させ、その上で今の時代に相応しい論理の仕組みを見いだすための一冊といえるはずです。

 少々、前置きが長くなりました。下記、各論考および執筆者のリストです。

序論 新本格ミステリの衰退期になすべきこと(飯田一史)※ 【試し読みできます】

 第一部 21世紀的生とミステリ
  二一世紀探偵小説と分岐する世界(笠井潔
  「変わってしまった世界」と二一世紀探偵神話―清涼院流水舞城王太郎論(飯田一史)
  ビンボー・ミステリの現在形―「二一世紀的な貧困」のミステリ的表現を巡って(藤田直哉

 第二部 形式性の追求とミステリ
  推理小説の形式化のふたつの道(蔓葉信博
  検索型ミステリの現在(渡邉大輔)
  21世紀本格2―二〇〇〇年代以降の島田荘司スクールに対する考察から(飯田一史)

 第三部 ミステリ諸派の検討
  「新本格ガイドライン、あるいは現代ミステリの方程式(蔓葉信博
  叙述トリック派を中心にみた現代ミステリの動向と変貌(小森健太朗
  終わりなき「日常の謎」 米澤穂信の空気を読む推理的ゾンビ(海老原豊
  現代「伝奇ミステリ」論―『火刑法廷』から〈刀城言耶〉シリーズまで―(岡和田晃
  「謎解きゲーム空間」と〈マン=マシン的推理〉―デジタルゲームにおける本格ミステリの試み(藤田直哉

 結語 本論集の使用例(飯田一史)
 ポスト新本格のためのブックガイド50選


なお、刊行記念企画として「終わりなき「日常の謎」」論を書いた海老原さんの「映画けいおん!」ミニレビューを以下に掲載いたします。お楽しみいただくとともに『21世紀探偵小説』をご購入いただければ幸いです。